広報音訳ボランティアフォローアップ研修会
                                                                          1月16日一部訂正 文責:岩本

第1回研修会のあらまし

 テーマ:読みの基本
 講 師:新宮昭道氏(ライトハウスライブラリー養成講座講師・ひびき出雲会員)
 内 容:
  音訳とは 「視覚障害者の目の代わりをすること」 最も大切なことは正確さ。
  発声練習 ロングトーンの練習:「ア-」と長く発声する(音程をかえて)など
         滑舌の練習:「アエイウエオアオ」の表、北原白秋「五十音」、「外郎売り」等で練習(添付資料は割愛しました)
         鼻濁音:音楽、小学校、区切、仕事、姿、器具庫、孫、私が など
         無声音:菊、靴、質、廂、蓋、普通、腹、「有ります」 など、
         長  音:大阪、お母さん、注意、醤油、先生、丁寧、方正、 :*但し、委員は iin,
         アクセント:頭高、中高、尾高、平板の4種類 我流にならないために辞書を引いて確かめる
                特に、アクセントの違いが意味の違いを生む言葉には注意
         イントネーション:シチュエーションに応じて、抑揚が変化する
  読み口調
     途中を切らずに読む(息つぎをしない。長いセンテンスもテンポを変えない)
       ア 彼はあの子と食事をしている
            〈中略〉
       エ 私との待ち合わせをすっぽかした彼はクラスで一番の人気者のあの子とレストランで食事をしているところを
        私に発見された。
       オ 私との待ち合わせをすっぽかした彼はクラスで一番の人気者のあの子とレストランで食事をしているところを
        私に発見され必死で言い訳をしている。
    途中で切る(文脈を考えて切る)
        今回の講座の定員は二十人で参加ご希望の方は費用2,000円を添えてお申し込み下さい。
    切り方に注意(切る位置で変わる意味)
        彼は赤信号を無視して走ってきたトラックにはねられた。
  文意・句読点・ポーズ (文意をつかみ、読点に惑わされず、適当なポーズを置いて読む)
      〈文例省略〉
  プロミネンス (ある言葉を際立たせる)
       私は あなたが 好きです (何処を際立たせるかによって伝わり方が変わる)
  「 」( )の読み方
       「ピッチを下げ、テンポを上げて読む」という処理の仕方
  事前調査(思い込みをしないため必ず調べる)
       漢字の読み、固有名詞、地名・人名等、耳で聞いただけではわかりにくい漢字や語句の説明、アクセント など読む前に
      きちんと調査
  下読み
  録 音 (特に気をつけるところ)
       マイクとの距離 音量レベル セクションの見出し 見出しと本文との間のポーズ 句読点のポーズ
       読み速度(会話のテンポで) セクション終了箇所のポーズ ページの挿入
  自己校正と修正(特に気をつけるところ)
       誤字 脱字(脱文) 消し忘れ 詰まり・言い淀み 不明瞭 ノイズ 突出語(助詞 が、を、は、に、て など)
       頭切れ・尻切れ テンポ 
       修正はセンテンス単位で(一単語、一文節だけの修正は不可)
       修正部分が突出しないように(修正箇所がわからないような修正を)

  (その他、表の読み、グラフの読み等の問題がありましたが、割愛します。


第2回研修会のあらまし

 テーマ:デイジー録音操作の基本 ~ 録音を始める前に、もう一度 ~
 講師:藤原理晴氏(ライトハウスライブラリー音訳担当職員)
 内容:
  だれのためのボランティア?……視覚障害者のため。広報の音訳活動と、雑誌・本などの音訳活動との.区別はない。
  「声」ができること……ピッチの上げ下げ、テンポの遅速、etc. 最も大切なことは「間」
  音訳は無色……音訳者はコピー機。音訳は(視覚情報を音声情報に)仮名変換するモノクロコピー。(カラーコピーは感情が入る)
  音訳を始める前に……(誤訳をしないために)下読み、調査を十分にする。下読みは2回はする。
                誤訳は視覚障害者の音訳に対する信頼を損なう。
  原稿の「全体」を把握する……見出し、小見出し、本文などの構成をしっかりつかむ。それらの区別は「間」によってつける。
                見出し(タイトル)の後の「間」は2.0秒、記事の終わりの「間」は3.0秒。
  読みばかりに気をつけてはいませんか……ノイズに気がつかない。「間」がいいかげんになる。緊張しないためには電話で話すイメージで。
  高いところから低いところへ……一区切りのセンテンスを読む場合のピッチは高く出だして低く終わる。これが自然な流れ。
  間(ま)は音訳のいのち……「間」は区切。「間」で表現できることは多い。
   《以上はレジュメに記載された項目に沿ったまとめ》

   《以下は、筆者が聞き取ったその他の項目のまとめ》
  原稿の取り扱い
   テーブルに置く――顔が下に向き、発声に無理が掛かる。
   手に持って掲げる――紙の音が入りやすい。 ⇒ クリヤー・ファイルに挟んで持つと音がしない。 ⇒ 立って読むとさらに良い。
   大きすぎる原稿――扱いやすいサイズに切ってもよい。
  入りやすいノイズ
   紙の音、衣服の音、冷暖房の音(読むときは切る)、マウスのクリック音(停止するときはスペース・キーで)、口中音(マイクが近すぎると入りやすい)
   セクションの切れ目のポーズ部分に入るノイズ(紙の音など)はゼッタイダメ
  読みと修正の実際
   小さいまとまり(段落等)で読み、修正し、完成したら次のまとまりに取りかかる。
   途中で間違えたり、読み詰まったりしたとき――次の①②は × 、③が○。
    ①その都度停止して直す。.
    ② 目印(マーク等)をつけておくなどして、後で上から聴きなおして直す。
    ③ 間違っても停止しないで、きちんと読めるまで続けてなんども読み直し、正しく読めたら次に進む。
     一区切り読んだら、最後のフレーズから聴きなおしてよければ上に上がる。上と同じ読みのフレーズがあればそれは削除する。
     これを続けてセクションの第1フレーズまで至れば、そのセクションは一応完成したことになる。
     その後、先頭フレーズから通して聴いて正しく読めていればそのセクションは完成。
   表の読み方―― 一応指示に従って読むが、伝わる読み方を工夫する。項目の切れ目がはっきり伝わるように「間」を適切に取る。

   セクション冒頭に生じる空白(多くはノイズ入り)――ゼッタイダメ!
    この原因はPRSProの「録音設定」で、[録音開始タイミング]を[録音キー操作時]にしているから。これは[音声検知時]に改めるべきだ。

 《上記アンダーライン部の講師の発言は筆者(岩本)には大いに異議があります。以下それを述べます》
   1.「セクション冒頭に生じる空白」は、音訳者の怠慢/あるいは不注意で、冒頭の無音部を放置しただけのこと。これは削除するのが原則です。
   2.[音声検知時]の設定は録音始めのフレーズに頭切れを発生します。そのわけは、PRSProに限らず、入力を検知して起動する録音システムは必
    ず一定以上の音量レベルに到達しないと働きません。とりわけ、PRSProの録音設定には「ノイズレベル設定」があって、-28 dBが標準になっていま
    す。このことは、-28 dB以下の低いレベルの音はノイズと見なされ、音声とは認識されませんから、当然録音は開始されません。
     人が発した声の始めの部分には、この-28 dB以下の音も含まれていますから、録音始めに「頭切れ」現象が発生するのは当然です。
     そのため、先輩たちは読み始めに「アー」とか一声捨て音を発しておいてから読み始めます。当然後で捨て音は削除しなければなりません。
   3.[録音キー操作時]では、上述の頭切れは発生しません。冒頭に生じる無音部を削除するのは、捨て音を削除するのと同等です。

  以上の観点から、筆者は[録音設定]の[録音開始タイミング]は[録音キー操作時]に設定することを推奨しています。
  なお、[録音設定]にはもう一つ見直すべき重要な設定項目がありますが、ここでは割愛します。
  


第3回研修会のあらまし

 テーマ:声の広報利用者との交流
 講 師:坂本節明(せつあき)、若築博延、石川美穂 (各、音訳広報・音訳図書利用者)
 内 容:
(1) 主催者挨拶(渡部課長)
   日頃の活動を、指導を受けながら振り返ることは大事なことと考えています。本フォローアップ研修は、一回目が読みの基本、二回目が録音操作の
  基本、というように、基礎となる知識・技術、取り組む姿勢、疑問点などを振り返って確認する、そして自信を持って今後の活動に繋げるということで、こ
  れは非常に大事なことだと思います。
   それから、同じ活動をしている仲間が一堂に会して交流することも非常に大事なことですし、さらに、利用していらっしゃる方との交流も貴重な機会だと
  思います。
   今回は、私ども職員も参加させて頂き、出雲市の担当職員も出席してもらっています。三回シリーズのまとめとなる有意義な交流会にして頂きたいと
  思います。よろしくお願いします。
 
(2)利用者の話を聞く
  1.坂本さんの談話
    長く音訳資料を利用していますが、今はプレクストーク(PLEXTALK)でデイジー版を聞いています。
    以前は、カセットテープでしたが、デイジー版になってデータ間の移動が楽で、聞きたい情報にすぐにたどり着けます。
    通常、再生速度を+1にして聞いています。――〈実際に器機を操作の実演をしながら〉
    このように自分の好みの速度で聞け、データの検索移動が非常に楽で、便利なもので喜んでいます。
    音訳の仕方について言えば、大変皆さん方がよく研究されており、私の方から要望することはほとんどありません。
    ただ細かいことを言えば、再生速度を上げたときに、やや聞きづらいところもあるかなという感じを受けることもあります。
    しかし最近の方々は声もいいし、訛りもなく、プロになってもいいのではないかと思うほどに上手く読んで居られます。
    前ごろは、訛りがある人も結構ありました。それもローカル色があって好いかなと思いますが、最近はそういう方もおられません。
    皆さんよく勉強しておられると感服しています。
    これまでもこの様な会にお招きいただいていろいろ申し上げてきましたが、よくお聞き届けいただいて、現在はなにもクレームのつけようもないほど
   よくできていると思います。
    ありがとうございます。末永くよろしくお願い申し上げます。

  2.若築さんの談話
    私が声の広報を聞くようになったころ、昭和59年(1984年)に音訳の広報ができました。
    それよりも前、昭和56年に出雲市が肢体障害者福祉モデル都市に指定されました。
    57年ごろから、障がい者の社会参加ということが問題にされるようになりました。
    そのころから、市の「週報」を音声訳することが考えられたのではないかと思います。
    昭和59年4月に視覚障害者協会会員へカセットテープレコーダーの配布が行われました。
    視覚障害者協会会員を幾つかのグループに分け、各グループに一本の週報四月号テープが配られました。
    しかし、グループ内を回っている間に自分の所に届いたのは10月でした。4月の情報を10月に受け取ってもほとんど無意味です。
    当時の担当課民政課に改善を要請しましたが、予算がないということで実現できません。
    或る市議を通じて議会で取り上げてもらい、カセットテープをダビングする器機を予算化してもらいました。
    しかし、市の方ではなかなか事業化できず、音声訳の元テープを市で作ってもらい、ダビングを視障協で行うことにしました。
    その後十年間、視障協がダビング業務とカセットテープの集配業務を行いました。
    十一年目になって、市の方でなんとかしてほしいと要請した結果、社会福祉協議会が管轄することになりました。
    社会福祉協議会が所管し、ボランティアの方の手によって音訳テープの制作等を行っていただくようになりましたりました。
    その後、カセットテープから現在のようなデイジーに変わり、より便利に利用できるようになりました。
    デイジーはカセットテープと違い、便利で音質もよく広報の内容すべてが入っているので、私どもも健常者の皆さんと同じように、一市民として必要な
   情報を受け取ることができるようになりました。まことにありがたいことです。
    広報を利用してよかった点は、情報バリアという言葉があるくらいに視覚障害者が情報を得るのは難しいのですが、この音訳広報によって市の情報
   を健常者と同じように受け取ることができるということが何よりよかった点だと思います。
       
  3.石川さんの談話
    日頃は、広報いずも、社協便り、書籍などを音訳して頂いてありがとうございます。
    私は、音訳図書についてお話しさせていただきます。
    生来読書好きでした、10数年前に失明し、その後デイジー図書の存在を知ってから家事や仕事の合間、子どもが宿題をしている間などに、読書を
   楽しんでいます。
    私は主として「プレクストーク・リンクポケット」という器機を使っています。
    ネット上のサピエ図書館からダウンロードするほか、ライトハウスライブラリーからCDを送ってもらい、ダビングして利用しています。
    サピエ図書館は、全国で音訳された本が集まっている図書館で、読みたい本を検索してダウンロードしています。
    他には、PCでマイブックというソフトがありますが、これでサピエからダウンロードしたりすることもあります。
    皆さんが活躍してくださっているおかげで、私たち視覚障害者が、読書を楽しむことができるようになりました。ありがとうございます。
    最後に、私もそうですが、視障者の中には、難聴を持っている人もいます。読んで頂くスピードやトーンについては器機の方で操作できますので、安
   心して読んで頂きたいと思います。ただ、文末の「~です」などの「す」をはっきり読まれるのはなさらなくていいと感じています。
    本当にありがとうございます。これからもよろしうお願い致します。

(3)グループに分かれて情報交換(グループでの話し合いのまとめ)
  ○坂本さんグループ
   音訳の際に、疑問に感じていることを坂本さんにお尋ねした。
   広報いずもの「健康カレンダー」では、会場や時間などが、中には重複しているものがある。続けて読もうとすれば何度も同じことを繰り返して読まな
  ければならないが、そういう場合聞く方としてはどう思われるか尋ねた。
   坂本さんは、そういう場合はまとめて読んでもらった方がわかりやすいというご返事だった。
   その他、高速で聞く場合に、同じ言葉が速くなったり遅くなったり、違う速度で読まれている場合は、理解しにくく聞きにくいこと。
   写真の説明について、内容によって必要な写真は読んでほしいが、そうでないものは省略してもらってもいいということ。
   中途失明の方は点字を読めない方もあり、音訳の広報が非常に役に立っているというお話しもあった。
   文中のカッコの処理で、「カッコ何々カッコトジ」としなくて、カッコの部分をトーンを変えるなどしてもいいのではという意見もあった。

  ○石川さんグループ
   どういう音訳が聞きやすいかについて、文末の「~です」「~ます」の「ス」の母音をはっきり発音されると却って聞きづらいということだった。
   読書好きの石川さんは、2日で1冊ぐらい、年間百冊以上の読書をなさるそうです。
   石川さんの聞かれる速度は普通2倍速程度だが、体調によっては1.5倍速などに落として聞かれるそうです。
   音訳者の経験談で、テープ時代には修正などが難しく難儀したが、デイジー録音時代になって格段に楽になったという話が出た。 
   その他、石川さんが使っておられるパソコンの画面などを見させて頂いて説明をお聞きした。

  ○若築さんグループ
    差別とはそれを意識していないことが差別だということ。
    再生速度を上げたときに聞き苦しくなるという話は、必要以上にゆっくり間延びした読み方にしないで、普通にしゃべるように読んでほしい。
    語尾を強調しないことも大切。声のトーンやスピードを一定にすると、速度を速めて聞いてもも違和感がない。
    (特に表などの場合は)晴眼者は目で見て全体を確認して理解できるが、視覚障害者は部分を聞いて全体を知るので、晴眼者の感覚で、ここは除
   いてもいいかなと判断して省かないでほしい。
    「社協だより」の寄附者のページでは、故人の名前が( )の中に書かれており、それが何十人分も続く。音訳では、「カッコ内は故人」という説明を最
   初に入れて読むが、それに続く読みに、「カッコ」を読んで人名を読んだ後「カッコトジ」を入れるべきか否か尋ねたところ、若築さんからは「カッコトジ」
   は読まなくてよいという回答だった。
     例: [墨字原稿] 出雲 花子(太郎)
        [読み方]   イズモハナコ カッコ タロウ

    講習会(フォローアップ研修第二回)の時に、「美しい声より伝わる声」と言われたが、伝わる声ということは聞きやすい声ということで、アクセントが
   はっきりした読み方は聞きやすいが、抑揚をつけた読み方は聞きにくい。聞きやすい読み方をされている他の人の録音を聞いて勉強をすることも大
   切だ。
    最初に研修を受けたとき、息の音の入らないようにという注意もあったが、その後の交流会で、方言も構わないし、犬の鳴き声などが入っても問題
   ないという話だった。
    ノイズについて、エアコンの音などは、プレクストークで聞くとあまり気にならないが、イヤホンで聴くと雑音がよくわかるということだ。
    若築さんは、雑音などについてはあまり神経質にならなくてもよく、それよりも情報を音訳してくれる人がいることが一番大切と話された。